先日話題になっていましたが、原付一種(50cc以下)に出力制限された125ccのものを含めるようにする検討が始まったそうです。つまり現行の原付二種(125cc以下)バイクに出力制限を施したものを原付一種として乗れるようにしましょうという話です。
そこで疑問に思ったのは、この出力制限をどのような方法で実装するのかということです。もちろんまだ法制化は終わっていませんし、具体的な条件なども不明ではありますが、勝手な仮説などを立てつつ推測をしてみました。
原付(50cc)は消滅へ
最初に原付バイクをめぐる制度や現状について簡単に整理し、今回の変更を受けて今後はどうなっていくかを考えてゆきたいと思います。
原動機付自転車は60-70年代を通して制度化されました。以降、現実の交通環境とそぐわないと言われながら、その都度その場しのぎ的な改正が行われたことにより、様々な制度の矛盾を抱えているのが原付バイクの現状だと思います。
今回予定されている原付制度の改変にしても、交通環境や免許制度全体を見通したような改正ではなく、どちらかと言えば、なるべく現状の制度の枠組みを崩さないような形で現実に合わせたものになっていて、その場しのぎ的なものであることは否定できないでしょう。
とは言え、今回の変更はメーカーの要望に沿う形で行われたようなので、今後開発される原付一種はこの基準に適合したものだけになる可能性が高く、結果的に50ccの原付新型モデルは消滅することになるのではないかと推測します。
もちろん既存のモデルは当面は売られるのかもしれませんし、現在使用されている原付が乗れなくなるというような話でもありません。
新原付はどんな感じになるのか
出力制限された原付二種を制度上は原付一種と言うわけでしょうが、混乱を招くのでおそらくメーカーによって別の通称的な名称が用意されるのでしょう。ここではこれを「新原付」としたいと思います。
さてこの新原付ですが実際はどんな感じになるのでしょうか。おそらく当面は基本的に既存の125ccのモデルを改造して新基準に適合させるパターンが多くなるでしょう。メーカーからすれば開発効率的に最も合理的だからです。
おそらくメーカーが「新原付」化を予定している原付二種は出力制限したあともパワー不足にならないと予想される小型のものに限られるでしょう。またこうした車種は構造的には原付一種とさほど変わらないので、ユーザー側も対応もしやすいでしょう。
合わせて車体価格の改定などもあるのかもしれませんが、125ccモデルと新原付ではほぼ同額にせざるを得ないのではないかと想像します。機能を省いたり簡略化したりして差別化を図ることも可能でしょうが、予想される販売台数からしてあまり手間がかかる改造を施しても回収できるかはわかりません。もちろん新原付のほうを高くするようなこともできないでしょう。
そうすると出力を制限する機構を付加された以外は、125ccモデルと構造的にも価格的にもほぼ同じものが新原付と呼ばれることになると考えられます。
出力制限をどう実装するか
ガソリンエンジンの諸元を見ればわかりますが、エンジンの基本性能は最大トルクと最大出力で表されています。出力は馬力とも言われていましたが、出力=トルク×回転数になります。
新原付は原付二種のエンジンを出力制限したものになるわけですが、エンジン自体は同じものだとすると基本的にトルクも同じとして考えるしかありません。
厳密に言えばガソリンエンジンのトルクは回転数により変化しトルクバンドと呼ばれる燃焼効率を最大化する回転域があり、出力制限による回転域がこれとどういう関係にあるかは不明です。またトルク自体を弱化させる方法もいくつか存在するとは思います。もっともトルクを変化させることは排ガス規制との兼ね合いもあり実際には難しいでしょう。
したがって回転数を制限する方向で出力制限されることになるだろうと考えられます。つまり新原付をスタートさせて一定の速度まで加速したあとは、アクセルをそれ以上吹かせてもエンジンの回転数は上がらない状態になるのだと思います。
このような特性は原付にどのような運動性能を期待しているかによってかなり評価が分かれるでしょう。わたしも含めた一般的な原付ユーザーが乗り換え候補として新原付を見た場合、トルクが上がり余裕を持った走行ができるため好評価になるかもしれません。逆に普段有り余るパワーを持て余しているような二輪車ユーザーはおそらく全く魅力を感じないことでしょう。
回転数の制限ってどうやるの?
では125ccのエンジンの回転数を制限すれば良いとして、具体的にどうすればいいのでしょうか。
わたしはただの原付のユーザーで、エンジンの構造や制御に特に詳しいわけではありません。ですから全くトンチンカンなことを言っているのかもしれませんが、ここからは個人的な推測というレベルで書いてみたいと思いますので、あまり真に受けないでください。
わたしが出力制御と聞いて最初に思ったのはECUによりエンジン回転数を制限すれば良いのか、ということでしたが、よく考えるとそれもおかしな気がします。なぜなら基本的にECUの制御は気温や回転数のデータから点火タイミングを算出しているだけなはずだからです。点火プラグの火力制御などはしないでしょうし、点火タイミングも燃焼効率に影響を与えるだけです。
それではFIにより燃料の量を制限すればどうでしょうか。しかし一般的にFIは時間あたりの噴射量の制御はできません。サイクルごとの噴射時間の制御はできるかもしれませんが燃料ガスには理想的な混合比があり、排ガス規制により極端な制御はできないはずです。したがってECUでは回転数の制限は難しいことがわかります。
とはいえ下り坂のようなエンジン回転数が上がりすぎる状況では点火が間引かれる車種があるという話を聞いたことがあります。燃料もカットされているのかは不明ですがエンジンブレーキにはなるのでしょう。こうした制御は実質的な回転数制限なのでECUでは無理というのも少し言い過ぎなのかもしれません。
さて、結局わたしがどうやって回転数を制限すると考えているのかと言えば、おそらく吸気の量を制限することによって行うしかないと思います。
通常アクセルをヒネるとスロットルボディのバルブが開いて吸気の量が増えます。吸気はエアフローセンサーにより量が測られ、それに応じた燃料が噴射されることになります。(原付の場合エアフローセンサーがなく、スロットル開度センサーとO2センサーだけで吸気の量を測る車種もある)
つまり何らかの物理的な加工によってスロットルバルブが途中までしか開かないようにするだけで一定の回転数以上には回らないエンジンが出来上がるはずです。具体的にはアクセルワイヤーの受けとなっている滑車状の部品を径が大きいものに取り替える、などが考えられます。
これが当たるかどうかはわかりませんが、案外簡単に出力制限する方法はあるのだなとは思いました。残念ながらメーカーは原付一種にそれほど大規模な投資をしたいとは考えていないでしょう。上記のような簡単な部品交換のみか、あるいは他の機械的、電子的な制御を追加する程度の改造になるのではないかと予想しています。
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