新原付の速度抑制はどうなるか考える

Colorful scooter set. Isolated motor vehicle for city driving.
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まだ正式に決まったわけではありませんが、原付一種の排気量区分が125ccまでに変更になりそうです。前回の記事ではその出力制限が吸気によって行われるだろうと予測しました。

一般的に原付にはいくつか機能上の制限が加えられていると言われます。法令上の制限によるものであったり、排気ガス規制に対応するためなどのもの、安全性を確保するための機構などです。主にメーカーの自主規制によることが多いでしょう。

そうした中に速度抑制機構があります。原付の速度制限は30km/hですが、これは新原付になっても変わらない予定です。そして125ccの原付二種の車両にエンジンの出力制限を加えるだけで、新原付としての車両基準は満たすことができます。そうすると疑問になるのは原付一種にはあり、原付二種にはない速度抑制機構は新原付おいてはどうなるのかということです。

原付の速度抑制装置

原付の速度抑制には様々なものがあり、細かいところでは以前はメーター部の警告灯が含まれていました。これは現行のモデルではほとんど見かけなくなりましたが、車種によっていろいろなパターンがありました。

2ストロークエンジンの原付が主流であったの時代はCDIがリミッターとしての機能を担っていました。こうしたスピードリミッターは2ストローク時代の原付が速度が出すぎていたという事情に対応するためメーカーの自主規制により付加されたものです。

現在の50ccの原付は4ストロークエンジンが主流になり、燃費性能の向上のためや排ガス規制などの影響で出力が以前に比べ低下しているため、なかなか上限速度まで達することは難しくなっています。速度抑制機構としては駆動系の変速域を制限しているものが一般的で、ECUによって上限速度の抑制をしているものはほとんどないのではないかと思います。

とはいえECUでもエンジンの保護や電気回路の限界があるため、一定の速度以上では抑制制御が行われているでしょう。ただこの場合の設定速度は駆動系による機械的な抑制速度をおそらく上回っていると考えられます。

駆動系の抑制では車種にもよりますが、概ね60km/h前後が上限となるように調整されたものが多いようです。(個人的には出したことがないので不明です)

現行の原付2種にも同様の抑制機構が付与されたものがあるのかもしれませんが、あったとしても設定された速度域は異なっているはずです。つまりここで新原付が原付2種のエンジン出力を絞るという変更だけにするのか、こうした抑制装置についても新たに追加または変更するのかということです。

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機械的な速度抑制機構

いずれにせよVベルトによる変速機構を持っている小型のスクーターではベルトの可動域の制限がそのまま速度域の制限になります。ベルトの位置はドライブシャフトの回転数、つまりはエンジンの回転数によって決まります。

新原付のエンジンの出力制限がエンジン回転数によって実装されるとしたら回転数上限においてのベルトの位置が最高速になってしまいますので、その場合は回転数上限が変速比最大に来るように調整されるのでしょう。もちろんその前にドライブ側プーリーが振り切れてしまうのであれば変更はないかもしれません。

このあたりは出力制限の影響がどの程度になるかによって変わってきます。明確な根拠は特にありませんが、おそらく最高速に若干影響が残る程度になり、駆動系の変更はないのではないかと予想しています。

前記事にも書きましたが、新原付にあたりメーカーは基本的にコストを優先し、新たな投資はできるだけ抑えようとすると思っています。駆動系の構成やハウジングの大きさの変更などでも速度域や走行性能の調節は可能ですが、商品性の向上にあまり影響がないような変更には手を付けないでしょう。ですからできる限り変更点は少なくしてくるのではないかと考えています。

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どうして速度抑制を気にするのか

原付で60km/hまでスピードを出すことはないのだから速度抑制装置がどうであろうと関係ないではないかという疑問はあるでしょう。もちろんそうなのですが、メーカーとユーザーの関係ではいろいろな意味で暗黙の了解的な合意のようなものがあり、両者の本当の関心は商品が売り物になるか買う価値があるかにあるわけです。

法規や環境保護の規制との長く現実的なせめぎあいのなかでこのラインは生まれており、そのラインを今回逸脱するかしないかは新原付が成功するかどうかに大きく影響するであろう焦点になるので関心があるのです。

国際的に見ると、125ccクラスの車両は中国やインドが圧倒的な市場になっています。多くは国内メーカー系列の製造であり、こうした車両は円安の状況であっても国内の車両よりかなり安い価格帯で販売されています。これらを国内向けに振り向けることは個人的にはないだろうと考えていましたが、実際には変わるのかもしれず、今回の変更の実際の狙いはこちらにある可能性もあるのでしょう。

表向きは排ガス規制に対応するということを名目にして新原付が誕生したわけですが、自動車分野も含めて電動化への流れもあり、いずれ交通政策全体の見直しが不可避な状況であるため、余計に今回は応急処置的な変更になっている面もあるでしょう。

こうしたことを良いように捉えるならば、EV2輪も含めて国内市場において輸入車との競争状態を作り出し、市場開放によるメリットを享受しようとする狙いがあるというふうにも言えます。どちらにせよこうした競争が強化される状況になれば、自主規制による速度抑制などは入れている余裕はなくなってゆくと思います。

また別の問題として、近年の排ガス規制などに対応した単気筒エンジンで特に課題になっているカーボンの蓄積問題があり、これが新原付対応のために出力制限されたエンジンではより深刻になる可能性があります。この対応として一時的にでも高回転でエンジンを回してカーボンを排出できるような仕組みが必要になるのかもしれず、出力規制の実装方法次第では実質的に速度抑制はできないという話にもなるかもしれません。

狩生

  ■ セミリタイヤブロガー ■
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読書 / 古代史研究 / ウォーキング / ダウンシフター / ドロー系絵描き / AppSheet / 脱消費主義 / 英文小説

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原付のススメ
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