あまり一般的には意識されていないのかもしれませんが、現在の半導体向けの投資や関連企業の株価の上昇は生成AIの将来性への期待から来ているところが大きいのです。
個人的な予測では生成AIバブルだとは思うのですが、AIのデファクトスタンダードを得ることは今後の経済的覇権においてかなり大きな意味を持ちそうにも見えます。
最近やたらと生成AIの発展を煽っているマッキンゼーデジタルのいくつかの記事を参照しながら、生成AIの私たちの社会への進出がどのような影響を与えるかを見てみましょう。
AIの進化ペースの加速
AIの開発や研究は数十年前から行われてきましたが近年は特に開発ペースを早めており、特に2022年後半のChatGPTの成功をうけて世界規模の開発競争がスタートしています。
人間のいろいろな能力の中央値と上位値をとり、それをAIの能力と比べたグラフがマッキンゼーより出ているのですが、2017年にはAIの能力が人間中央値に2040年前後に達すると予測されていた「創造力」「論理的説明と問題解決」「自然言語の理解」などが2023年において既に到達しているか、もしくは数年のうちに到達することになっており、AI進化のペースは予想よりかなり早くなっているようです。
生成AIの経済的な可能性
これまでの自動化(いわゆる機械化、あるいは省人化)は主に製造や人的作業などの活動に影響を与えてきましたが、AIの進化による自動化ではナレッジワークと言われる意思決定や対話を行う仕事に最も影響を与えることになるでしょう。
これもグラフが出ており、影響が大きい分野として「教育」「経営」「法律」「通信」「芸術」があげられています。こうした分野では仕事の一部が自動化される可能性が高いでしょう。
生成AIは既にたいていの種類のコンテンツ(文書、画像、動画、音楽、コードなど)を作成できるようになっています。既にこれを利用して多くの企業が特定の作業に使うためのアプリケーションを開発しています。
生成AIの影響はそれぞれの業界や部門によっても異なると予測されています。マーケティングと販売部門はどの業界でも影響が大きく、ハイテク業界と銀行業界では特にソフトウェア開発部門においての影響が大きくなるでしょう。
影響が業種などで異なることもあって、生成AIをどのような形で利用するのが適切なのかを理解しておくことが必要になってくるでしょう。たとえば銀行業では古いプログラムコードやシステムを自動変換するようなAIの活用が最も大きくなりますし、緊急時の顧客対応チャットボットの効用も大きくなるでしょう。
ただしマーケティングの責任者にとったアンケート結果によると、多くはAIの活用の必要性は認めるものの、実際にはまだあまり使われていないというのが現実のようです。マーケティングにおいてのAI活用の取り組みでは「見込み顧客の特定」「ABテスト、SEO」「顧客向けチャットボット」などが多いようです。
ソフトウェア開発はAI進化の恩恵を最も受ける部門になるでしょう。既に生成ツールによってコードの文書化(適切なコメント付与)やコード作成、コードリファクタリング(既存のコードの最適化)などが可能になっています。
ソフトウェアの開発者にとっても生成AIツールの利用は満足度が高いようです。単調な作業を自動化し、情報の入手も手早くできるため生産性の向上が実感できるからでしょう。
マッキンゼーの調査では生成AIを試したことがあると答えた人が大多数であることがわかりました。また世代別でも団塊の世代のほうがミレニアル世代より仕事にAIを使用する傾向が強いようです。
企業へのAI導入の機運はAIに精通した従業員への必要性も高めています。企業はAIの熟練者に対してやりがいのある勤務経験を提供する必要があるでしょう。
生成AIの抱えている問題はまだいくつもあるので、企業はAIの導入を進めるのであれば、潜在的なリスクを考慮した上で行う必要があります。生成AIは誤った出力をする可能性があり、著作物への配慮もまだ完璧にはなっていません。生成されたコンテンツは使用される前に人間のチェックが必要になるでしょう。
マッキンゼーの主張では、AIが世界全体の労働生産性を大幅に向上させるものの、この生産性向上の恩恵を享受するためには影響を受けて解雇される労働者の転職やスキル習得のための支援がなくてはならないとしています。
まとめ
生成AIの開発は加速しており、マッキンゼーによればおそらく多くの能力で人間の能力に並ぶのも時間の問題であろうということです。
経済的な影響は大きく業種によって違いはあるものの、多くの人は便利になる反面、仕事の性質を変える必要に迫られるでしょう。
AIの開発の影響を見ながら、企業は従業員の管理に気を使わなくてはならないでしょう。また生産性向上により溢れることになる労働者にむけた支援策が同時に必要になってくるのではないでしょうか。
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