ライドシェアの経済性を考える

スポンサーリンク

ライドシェアが24年度から一部解禁されることになったことをうけて、メディアにも様々な意見が出てきました。国内ではタクシー業界と競合することもあってライドシェアに対して慎重な意見が目立っているようです。

ライドシェアの議論はタクシー業界の経営状態の限界化が進んだことによって始まったものです。特に地方の運転手の不足については原因とするよりは規制の結果である面が強く、公共的なモビリティサービスの維持という観点から見ると、もはや規制緩和は避けて通ることができないのではないかと思います。

ライドシェアの現状

ライドシェアについては受け入れていない国も多いのですが、モビリティサービスとして最も進んでいると思われる米国での状況と経済性を見てみましょう。

米国のライドシェア

米国にはUberやLyftなどのアプリ型のライドシェアリングプラットフォームがあり、既に一般的な移動手段として定着しています。10年でゼロの状態から160億ドルの市場規模になるまでに急成長しました。

自動車のライドシェアには乗り合い型と専属ドライバー型の二種類の形態があり、米国で普及しているのは専属ドライバー型です。

ライドシェアの経済性は基本的に車両の所有と運用のコストをドライバーと乗客とでシェアリングするところにあり、タクシー利用の経済性との比較はまた別の議論になります。

一般に自家用車の時間稼働率は4%ほどとされており、シェアリングエコノミーにより車両の総数を減らし、稼働率を上げることができれば車両の所有コストが低減できることになります。

また米国のライドシェアではダイナミックプライシングと言われる、ドライバーと乗客のバランスを料金を変動させることによって調整するしくみになっています。これにより乗客の待ち時間が減り、ドライバーの空車時間も減らすことができると言われています。

また料金についても米国のライドシェアの消費者余剰はかなり高いとされ、乗客の満足度も高いようです。(ここでの消費者余剰は乗客が自分で自動車を所有することに比較しての節約分です。)2023年の顧客あたりの利用高は110ドル/月を越えました。

ただし新規参入者の増えた時期はドライバー側の経済状況はその分かなり厳しくなったようで、燃料やメンテナンス費用、保険などの支出がかさみ、従来のフルタイムドライバーほどには稼げた人は少なかったようです。現在100万人のUberドライバーの時給は働き方によって大きく異なりますが、経費を差し引いて25ドルから35ドルほどになっているようです。

温室効果ガスについては統計によってかなり違いがありますが、概ね減りつつあり、今後の電気自動車へのシフトによってかなり減らせるとも言われています。

シェアリングサービスの普及に伴って自家用車を利用する人は減りましたが、初期の段階ではライドシェア用の車両が増えてしまい、徒歩や自転車、公共交通機関を使っていたユーザーの一部も利用するようになったため、都市部では渋滞や死亡事故が増加しました。

ただこうしたことも次第に落ち着きを見せているようです。他の交通機関を含めた統合的なライドプラットフォームも提案されていますし、ライドシェアを越えた形で交通システムを改善してゆく余地はまだあるのでしょう。

ライドシェアの経済性

ライドシェアの経済性はクルマの所有コストと運用コストをシェアできることで生まれます。もちろんスマートフォンとGPS機能を利用したイノベーションによって実現されており、これからも進化してゆく可能性があります。

稼働率の低い自家用車の数を減らすことによって経済効率性の向上を図るわけですから、これは自動車の数を増やしたい自動車産業にとっては、おそらくあまりうれしい話にはならないでしょう。

現在、国内の自動車メーカーは自動車の単価を上げることに腐心しているため、いずれ経済性の高いライドシェアが受け入れられやすい環境にはすぐになってゆくでしょう。

ダウンシフト的な観点からライドシェアを評価するなら、もし米国並のライドシェアサービスが国内においても実現するのであれば、マイカーを所有しなくても済むケースが増えて家計的に有用でしょうから歓迎したいところです。また働く側としても自由な裁量を持って働けるという意味でダウンシフトの可能性を新たに開くことができるのではないかと考えます。

国内ライドシェアは成立するか

国内で24年度から始まる新制度はタクシー会社に雇用されたドライバーが自家用車でサービスを行うというもので、国際的に一般的な意味で言うライドシェアとは言い難いものです。現在言われているしくみではライドシェアの経済性の泉源であるシェアリングエコノミーとして成立しないので、おそらくうまくはいかないでしょう。

国内のタクシー業界の問題は、規制が多いのでコスト高であるにもかかわらず料金が抑えられているために収益が出ず、労働者も集まらないということにあるのだと思います。需要から見ると料金を上げることが難しいこともあり、ビジネスモデル的に破綻しつつあるのが現状なのでしょう。

本来であれば、全面的なライドシェアの導入などで規制を撤廃し、サービス水準と運用コストを需要に合わせて低減させる必要があるのでしょうが、政策的には難しいのかもしれません。

またライドシェアは都市内の移動では機能しますが、世界的にも郊外や山間部ではサービスの維持が難しいようです。これからライドシェアを導入するにしても都市部と郊外とでは利害的に一致しないでしょうから、人口密度などで分離した議論が必要かもしれません。

狩生

  ■ フリーダウンシフター ■
  ■ 減速ライフを実践中! ■
  ■ のんびり生きましょう ■

読書 / 英語小説 / 古代史研究 / ドロー系 / ウォーキング / python / 脱消費主義 / 新米ブロガー

著者をフォローする
クルマ社会
スポンサーリンク
著者をフォローする

コメント

タイトルとURLをコピーしました