家計簿の付け方は各々の家庭の事情にあわせてそれぞれ変えてゆくべきです。ですから家計管理に正解の形などはありません。
ここからは、そうした様々な家計簿の付け方のなかでも、より家計簿のパワーを活かせるような具体的な方法を説明していきます。
ではまず、家計簿における「予算」について見てゆきましょう。
家計の予算は設定すべき?
「予算」は家計簿ソフトウェアでは定番の機能になっています。費目ごとに予算額を設定できるものが多いでしょう。予算機能は使ったほうが良いのでしょうか?
予算機能とは
予算機能は、あらかじめアプリケーションに金額を設定しておくと、費用を入力するとその時点での予算の消化率や超過率を表示してくれます。一定の超過率になると警告や通知してくれるものもあります。
たとえば今月の食費は5万円などと設定しておくと、4万円程度に到達したところでアプリケーションから警告などがあり、今月はそろそろ食費を抑えなくては、となるわけです。
このように家計簿に予算を設定するという方法は、昔からある「袋分け家計簿」と同じです。理想的な家計支出の割合を事前に想定しておき、それにあわせるように出費をコントロールしようということですね。
たしかに家計に予算を持ち込むのは合理的でもありますし、計画的であるようにも感じられるかもしれません。
しかし家計簿の目的に照らし合わせて考えてみると、家計において費目ごとの予算を設定するのは止めておいたほうがよいという結論になります。
予算は要らない
結論から書くと、費目ごとの予算は家計管理には必要ありません。理由はいくつかあります。
家計管理に必要なのはあくまでも支出の総額です。ですから個別の費目の総額は支出のバランスを考えるとき以外ではあまり意味がありません。
費目別の予算は各費目ごとの目標額ということになります。つまり、家計管理上あまり意味のないところに目標を設定していることになります。
食費で使う1000円も教育費で使う1000円も同じ1000円です。つまり、お金に色は付いていないということです。慣れている人には当たり前にも感じられるかもしれませんが、このことは直感的に理解しにくい人もいるのではないかと思います。
あちらの費目で予算超過していても、こちらの費目ではまだ余裕があるから大丈夫だな、というふうに考えることには家計簿の本質的な意味があまりないのです。
また、費目ごとに予算額との関係を考えることそのものにも、管理すべきことが増えてしまっているという意味で無駄があります。家計簿を続けるコツとしても手数はかからないほうが良いでしょう。
さらに予算というのは、消化すべき金額に転嫁しがちなものです。家計においてそのようなものは作るべきではありません。
月末になって、今月は被服費が予算に比べて1万円余りそうだ、という状況になった時、急いで使わないと損だという気持ちになるのではないでしょうか。
その一方で食費が予算超過していたとして、その対策でカツカツな食事生活をすることに何か意味があるでしょうか。
家計の支出バランスには正解はありません。理想的な家計というのはないのです。あるのは個別の家計の事情だけです。ですから事前に予算というのは技術的に組めないのです。
家計管理の目的
もちろん支出のバランスにはある程度は気を配る必要はあります。特に家計をおおまかにも把握していないような状態ならなおさらそうでしょう。しかし家計を把握して、支出を安定化することに慣れた人にとっては予算はあまりにも無駄な存在です。
意識するべきなのはあくまでも月間の総支出額、あるいは年間の総支出額です。予算をあえて置くならここに置きましょう。仮に置いたとしても予算が余ったとか超過したとかで支出行動を変えるのは家計管理において本末転倒になりかねません。
家計管理は自分が「本当に必要なお金」を見極めて、その収支のバランスを取ることに目的があるからです。予算はその家計管理の目標を簡単に見失わせてしまいます。
予算は設定しないでいきましょう。
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