自動運転車はまだ来ない

自動運転車
著作者:jcomp/出典:Freepik
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自動運転車の開発は一時期派手に喧伝されていましたが、最近はあまり聞くこともなくなってきました。実際はどうなっているのかThe Vergeに記事がありましたので要約しながら見てみましょう。

自動運転車を待ちながら

「自動運転車は世界を変える」は無人自動車のスタートアップ企業がよく言っているセリフ。でもこの言い回しはどこかで聞いたことがありますね。10年前のほぼすべてのテクノロジー企業とシリコンバレーの支持者たちから。人類に力を与え、世界を変える!(もちろんお金をガツガツ稼ぐことなんかじゃありません、知らんけど)

つまり自動運転者がいずれ実現するのは間違いないでしょうが、世界を変えるほどかは疑問が残ります。理由を説明してゆきましょう。

今週AV(自動運転車)スタートアップ企業のアルゴAIが業務を停止しました。アルゴAIは主要な自動車メーカーであるフォードとフォルクスワーゲンから資金援助を受けており、同社はマイアミ、オースティン、ワシントンDCで走行テストをしていました。

開発されたAVは最終的にアルゴのロボタクシーと自動運転トラックとして発表されると予想されていました。同社は何も問題を抱えていない良い会社とみなされていました。ところが結果的に自動運転車を開発にかかる年月と安全性の確保への懸念からアルゴは見限られることになってしまいました。フォードは決算報告で自動運転車が実現するのはまだ先のことだと認めました。

振り返ってみると、開発会社の煽り文句や”専門家”の分析にはもう少し懐疑的であるべきだったのかもしれません。

カーネギーメロン大学のロボット工学の教授であるラージ・ラジクマールはビジネスとしてみればアルゴのような企業が失敗するのは驚くようなことではないと言います。ロボタクシーの開発には多額の費用と時間がかかり、それを無収入のまま長く続けられるような企業はない。アルゴは倒産ドミノの最初のひとつで、他のロボタクシー事業の企業もそれに続くでしょう、と。

今にしてみればこれは明らかなことでもあったのかもしれません。アルゴははっきりと撤退という結果になりましたが、自動運転車の分野では何年にもわたって買収、売却などが繰り返されてきました。

Zooxはアマゾンに売却されました。UberはAV部門を事実上無料でAuroraに譲渡しました。Lyftはトヨタの子会社に売却され、クルーズがVoyageを買収、NuroはIkeを吸収しました。(AVスタートアップは風変わりな名称をつける風習がある)

まだ踏ん張っている企業も出血を続けており、AuroraさえもAppleもしくはMicrosoftへの事業売却を検討していると言われています。同社は昨年、特別目的会社と合併して株式を公開、その後に株価の80%を失いました。この会社はGoogleの自動運転車プロジェクト(現在のWaymo)の創設者の1人であるクリス・アームソンによって設立されました。彼はかつて「自動運転のヘンリー・フォード」と呼ばれ、自分の子どもたちは運転免許を取る必要はないだろうと言ってのけました。

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世界を変えるとは言った、言ったが

しかし私は自動運転車は実現すると思います、いつかは。なぜならそれは実際に動いているからです。たしかに少しおっかなびっくりで、たまに不機嫌になったりはしますが動いているのです。

わたしは実際に乗ってみましたし、エンジニアにもインタビューしました。この7年間、テクノロジーが進化し、成長してゆくのを見てきました。

過大な期待によって膨らんでいた幻想が弾けました。大きな果実が実ることはありませんでした。自動車メーカーや大手ベンチャーキャピタルは近い将来に何百万台ものロボットカーが街を闊歩することになると言っていましたが、多額の損失を出しています。

ソフトバンクはCruise、Nuro、Uberなどの自動運転車の計画に数十億ドルを注ぎ込んでいましたが、最近Vision Fundへの投資で230億ドルの損失を出したと報告しました。

Ed Niedermeyerのツイート「最近は良いことも悪いことも全てテクノロジーのせいにしてしまう風潮があるけど、自動運転車バブルは明らかに人間の失敗だった。AV分野の失敗は傲慢、強欲、ごまかし、自己欺瞞のためで、テクノロジーではありません」

テクノロジーの成熟度を示すGartnerのハイプサイクルの「幻滅の谷」に、自動運転車は留まっているように見えるとAV開発者は公然と認めるようになってきました。

ゼネラルモータースの決算説明会で、クルーズCEOのカイル・ヴォクトは商用の自動運転サービスと、幻滅の谷から抜け出せていない企業の間で分離が進んでいる。最高の製品を持つ企業だけが先行して、加速していると述べています。

クルーズは2025年までに10億ドルの収益を目指しています。今年に入ってからの累計赤字額は14億ドル。年内にフェニックスとオースティンで商用サービスを開始するとしています。Waymoはロサンゼルスにロボタクシーを導入。緩やかで着実な歩みが続きます。

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置き去られた私たち

結局のところ、私たちを好きなところに連れて行ってくれるロボットカーが当面来ないとしたら、何がどうなるんでしょうか?

建設機械や農作業用の自律型車両には期待が寄せられています。倉庫の自動化もそうです。長距離配送用のセミトラックはまだ現実的です。自律走行する電車やバスも有力な可能性を持っています。

これらに共通しているのは過大な期待に煽られにくいため、ロボットタクシーの新興企業がVCに札束で叩かれたようなことは起こらないだろうということです。

フォードのフルークルーズ、GMのスーパークルーズ、テスラのオートパイロットなどの運転支援技術は、ロボットタクシーが下降線をたどっているあいだに過大な期待を受ける側になりました。もちろんこちらの技術にも落とし穴がないわけではありません。

では置き去られた私たちはどうなるのでしょうか? おそらくそれは何も変わらないということになるでしょう。手動自動車は良くも悪くも私たちの生活を支配し続けます。ロボタクシーが世界を変えることもありません。

きっとあなたは自家用自動運転車を手に入れることはないでしょうし、Uberのようなクルマに乗ることすらないかもしれません。しかし自動運転のショベルカーで建設現場を走ったり、車掌のいない電車に乗ることはあるかもしれません。

もちろんまだ可能性はありますが、そう多くはありません。

狩生

  ■ セミリタイヤブロガー ■
  ■ 減速ライフを実践中! ■
  ■ のんびり生きましょう ■

読書 / 古代史研究 / ウォーキング / ダウンシフター / ドロー系絵描き / AppSheet / 脱消費主義 / 英文小説

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