歌詞の批評法まとめ

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コンテンツ消費としての歌詞批評のすすめ

音楽コンテンツを楽しんでゆくために歌詞の批評をすることをお勧めしたいと思います。

アーティストが表現しようとしている楽曲のメッセージを最大限に受け取るためには歌詞を解釈することが欠かせません。逆に歌詞を解釈することなしには音楽を鑑賞したことにはならないと考えます。

こうした解釈は聴き手それぞれで違いがあり個人的なものでもあります。その一方で歌詞解釈にはそれなりに技術的側面や芸術的センスが関与する部分も大きいので、ある程度は努力して手法や定石を学ぶ必要もあります。

歌詞を批評としてまとめることは自分の中で曲の解釈を整理し、より深く楽曲を味わうことになるはずです。またその批評を別の人が読むことで楽曲鑑賞の楽しみを共有しやすくなります。

この記事では、そうした歌詞を深く読み解き、批評するためのポイントや考え方を整理しました。

言葉の海へ乗り出そう

歌詞にはアーティストが描くありとあらゆる感情や物語が詰まっています。喜び、悲しみ、怒り、切なさ、そして時には社会へのメッセージまで、多種多様なテーマが言葉の海を漂っています。

歌詞の解釈を単に「良い歌詞」「悪い歌詞」で終わらせず、多角的な視点から味わうことで、新たな発見や感動が生まれるはずです。

歌詞批評の心構え

先入観は持たないようにする

実際に行うのは難しいのですが、歌詞を読む前にアーティストのイメージや曲の雰囲気、一般的な評価などに囚われず、フラットな気持ちで歌詞と向き合いましょう。先入観があると、歌詞本来の意味を見失ってしまいやすくなります。

歌詞全体の俯瞰からはじめる

まずは歌詞全体を読んで、テーマや伝えたいメッセージを大まかに掴みましょう。曲の構成(Aメロ、Bメロ、サビなど)や、繰り返されるフレーズ、キーワードなども意識すると、歌詞全体の流れが見えやすくなります。

言葉の裏側まで想像する

歌詞に書かれている表面的な言葉だけでなく、その裏側にある感情や物語を想像してみましょう。なぜこの言葉が使われているのか、この表現にはどんな意味が込められているのか、行間を読み解くことで、歌詞の深層に迫ることができるでしょう。

歌詞批評のポイント:5つの視点

歌詞批評のポイントは多岐にわたりますが、ここでは特に重要な5つの視点を紹介します。

言葉の表現

  • 比喩表現: 歌詞には、隠喩、直喩、擬人化など、様々な比喩表現が用いられています。比喩は歌詞では基本的なレトリックになります。比喩によって歌詞の内容が豊かになったり、メッセージや感情を効果的に伝える役割を果たしています。作詞者が意図した比喩関係を読み取りましょう。
  • 言葉の選び方: 歌詞に使われている言葉が、どのようにテーマやメッセージを形成しているか、聴き手にどのような印象や効果を与えようとしているかなどを検討してみましょう。
  • 多義性: 一つの言葉が複数の意味を持つことがあります。歌詞の中で、言葉の多義性がどのように効果的に使われているか、文脈などから判断しましょう。

物語性

  • ストーリー: 歌詞にストーリーがある場合、その展開や登場人物の感情、背景などを想像してみましょう。ストーリーがどう聴き手の心を惹きつけているか、共感を呼ぶかなどを考察してみましょう。
  • 視点: 歌詞が誰の視点を主体として語られているのか、どのような世界を描こうとしているかを確認しましょう。視点の受け取り方によって物語の解釈は大きく変わるかもしれません。
  • 感情: 歌詞に込められた感情が、どのように表現されているか、言葉や比喩表現、ストーリー展開などから分析しましょう。感情が聴き手にどのように伝わるか、共感を呼ぶかなどを考えてみましょう。

曲との融合性

  • リズム: リリックの作るリズムが、曲のリズムとどのように融合しているか、言葉の選び方やフレーズの区切り方などを分析してみましょう。
  • メロディー: ボーカルラインのメロディーが、曲の雰囲気や感情をどのように表現しようとしているか、音の高低やリズム、フレーズの繰り返しなどに注目してみましょう。
  • 曲構成: 曲の構成(Aメロ、Bメロ、サビなど)が、歌詞の展開やメッセージとどのように関連しているか、どのような補完関係になっているかなど、全体の流れを把握しましょう。

テーマとメッセージ

  • 普遍性: 歌詞が聴き手の共感を呼ぶかどうかは扱っているテーマが、普遍的な人間の感情や経験に基づいているかどうかに依存しています。歌詞が普遍性をどれくらい表現しているかを検討してみましょう。
  • 独自性: 歌詞のテーマやメッセージが他の楽曲にはない独自性を持っているかは、新しい視点や価値観を期待する聴き手にとっては重要です。ありきたりな内容では歌詞を読む意義がなくなってしまいます。
  • 社会性: 歌詞が社会的な問題やメッセージを含んでいる場合、その内容や表現方法が、聴き手にどのような影響を与えるか、社会に対してどのような問題提起をしているかなどを誤解のないように受け止める必要があります。

文化的背景

  • 社会背景: 歌詞の内容がどのような時代背景や社会状況を描いているか、なぜそのような背景が選ばれたのかを分析してみましょう。
  • 文化的要素: 歌詞に文化や歴史、人生観、宗教観などが反映されている場合、それらの要素が歌詞の意味や表現によってどのような価値観として描いているかを考察してみましょう。
  • 言語: 歌詞に使われている言語、言葉使いや表現が、特定の世代や地域、文化圏に特有のものである場合、その背景や意味合いを考慮して歌詞の内容を解釈しましょう。

批評を実践してみる

ここで実際に歌詞を例に挙げて上記で紹介したポイントをどのように活用して批評していくかを見てみましょう。

夢ならばどれほどよかったでしょう
未だにあなたのことを夢にみる
忘れた物を取りに帰るように
古びた思い出の埃を払う

米津玄師「Lemon」

  • 言葉の表現:
    • 「夢ならばどれほどよかったでしょう 未だにあなたのことを夢にみる」は、叶わなかった願いや切ない感情とともにパートナーとの別れを表現しています。
    • 「忘れた物を取りに帰るように 古びた思い出の埃を払う」は、忘れられた記憶を思い返していることの比喩的な表現です。
  • 物語性:
    • 亡くなった「あなた」への切ない想いが歌われています。
    • 「あなた」との別れによる喪失感が感じられます。
  • 曲との融合:
    • 切ないメロディーによって感情がより深く表現されています。
    • サビでは力強い歌声によって、忘れられない「あなた」への想いが叫びのように表現されます。
  • テーマ・メッセージ:
    • 喪失感や悲しみを乗り越えられない、人間の弱さやもどかしさを描いています。
    • 普遍的なテーマでありながら、米津玄師ならではの繊細な表現が光ります。
  • 文化的背景:
    • 歌詞やMVに登場するレモンは、その香りによって結びついた「あなた」を思い越させるのでしょう。またその苦い酸味は「別れ」による辛い感情を象徴しているのかもしれません。

このような感じで様々な角度から歌詞を分析することで、その楽曲が持つ魅力や深みに気づくことができるでしょう。

歌詞批評における注意点:客観性と多様性

客観的な視点

歌詞批評はあくまで個人的な解釈に基づくものなので、自分の感情や価値観を中心にしてもかまいませんが、客観的な視点も同時に持ったうえで歌詞を分析するように心がけましょう。そうすることで自分の感性がどのような状態にあるのかを確認できますし、客観的で説得力のある批評ができるようになります。

解釈の多様性

歌詞は聴き手それぞれが異なる解釈をすることができます。自分の解釈とともに他の人の解釈も尊重するように配慮しながら、多様な視点から歌詞を捉えられるように努めましょう。

言葉の力

優れた歌詞は人の心を揺さぶり、感情を動かす力を持っていると思います。言葉の力を理解して歌詞に込められたメッセージや感情を丁寧に読み解いてゆくことが、歌詞批評の醍醐味であり、音楽を楽しむための重要なポイントだと言えます。

歌詞の世界に乗り出そう

歌詞批評は音楽をより深く楽しむための羅針盤として役立ちます。歌詞という言葉の海を探求してそこに隠された物語や感情やメッセージを読み解いてゆけば、音楽の新たな魅力の発見につながるでしょう。

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