ダウンシフトを考える
ダウンシフトという言葉をご存知でしょうか、シフトダウンだとクルマの急加速かエンジンブレーキのような話になってしまいますが、そうではありません。
ダウンシフトとは
「浪費するアメリカ人」(ジュリエット・B.ショア著)という本で紹介されたのが国内では最初です。
つまりライフスタイルや生活に対する考え方の一種です。仕事などで収入のために費やしている時間を減らして、自分にとって価値のある時間と生活をしてゆこうという単純な考え方です。
正確に言うなら、ダウンシフトはもっと急激な生活の変化のことを指しているとされることもありますが、厳密な定義はないと思います。
脱物質主義的なライフスタイルは世界的な流行でもあり、今後、多くの人々の生活において主流となる考え方になってゆく可能性もあるでしょう。
日本では硬直的な雇用制度や社会的な風潮もあって、なかなか社会的に理解される生活様式にはならないかもしれませんが、一定の資産を築いた高所得な中高年層や、物質主義に疑問を持った低所得層の若者などが自然にこうした流れを作り始めているようにも感じられます。
ダウンシフトのポイント
特に定義もありませんので、カリュウの考えるダウンシフトについて書いてみたいと思います。
ダウンシフトには従来からの生活様式に対して2つのポイントとなる主張があります。
短時間労働
一つは短時間労働です。ダウンシフトには仕事から完全にリタイヤしてしまう人も含みますので、労働時間の短縮化と言うよりも、余暇時間の伸長化とするほうが正確なのかもしれません。
経済社会側から見ると、労働に求められる質の高度化や規格化の中で、弾き出されてしまう人々が出てきているということなのでしょうが、働く人の側から見ると、社会に必要な労働力を維持するだけの資金が足りなくなってきているということなのだと思います。
労働時間の長期化によって余暇時間の価値が高騰し、それを補うだけの価値を対価として経済社会が与えられていないというわけです。おそらくグローバル経済は「時間」が希少化してきている現状と衝突を起こしつつあるのでしょう。
消費社会の否定
商業主義的な広告戦略などによって、消費社会は加速してきたわけですが、これも消費による効用が逓減化することによって限界が見えはじめました。
消費のための費用が収入を上回って、収入のための労働を強要されるという構図が続いたこともあって、消費社会全体を否定する考え方が支持を集めつつあるのでしょう。
ダウンシフトの実践
カリュウは一応ダウンシフターを名告ってこのブログなどを書いています。実際に生活はダウンシフトな生活になっていると思っています。ただし、ダウンしたとはっきり言えるほどの高額所得者とか重度の仕事中毒者であったことは一度もないのでインチキといえばインチキです。
ダウンシフト自体はひとつのライフスタイルなので、安易に人にオススメしたりするようなものではないのでしょうが、それなりに現代社会に適合したライフスタイルでもあり、かつ人間的な要素が強いものなので、誰でも一度は自分の生活に受け入れるかどうか、考えるだけの価値がある生活様式だと思っています。
ダウンシフトの困難さ
ダウンシフトは仕事を減らすというのが最初のポイントです。
しかし、国内でフルタイムで働いているサラリーマンの場合は、ここの選択肢自体が取れないことが多いでしょう。実質的に転職などを含めて考えなくてはなりません。
減速生活の裏付けとなる収入の確保も、そう簡単な話ではないでしょう。食いつなげるだけの資産を持っているのであればいいのですが、たいていは短時間の仕事をすることになりますし、時間効率の良い仕事はおそらく限られているでしょう。
またダウンシフトは最終的にはミニマムな生活を目指すことになります。物質主義的な要素をどんどん外して、消費主義から脱却してゆくと「自分に本当に必要なだけの消費」に自然に落ち着くからです。
こうなると消費主義にすっかり染まってしまっている人には脱物質主義などはナンセンスなもののようにしか思われないでしょう。この点でダウンシフトを受け入れられるかどうかが変わってきます。
現実と直面する難しさもあります。
自分に必要な時間やお金などを自分で考えてゆくことは、ダウンシフトライフの要件でもあるでしょう。
こうしたことを考えることに慣れていない人が多いでしょうし、それなりにエネルギーも使います。そんなことをするくらいなら闇雲に働いたほうがマシだと言う人もいるでしょう。
ダウンシフトの可能性
実際には様々な困難さのあるダウンシフトですが、大きな可能性はあると思います。
ダウンシフトは生活の考え方です。つまり考え方さえ変えることができれば誰でも使えるライフスタイルです。ダウンシフトの実現性を証明してゆくことは貧困を無くしたようなものかもしれません。
消費主義に煽られた結果として、わたしたちは貧困を必要以上に恐れている部分があるのでしょう。
ダウンシフトが生み出す時間は、本当にやりたいことのために使えます。お金のかからない趣味もたくさんあります。
この現代社会で人々の幸福を本当に生み出すものがあるとすれば、ダウンシフトライフしかないのではないでしょうか。
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