暗号資産のニュース記事などを読んでいると最近よく出てくるのがDAO、ブロックチェーン技術を使った新しい組織形態だとは説明されるものの、いまいちよく分からないのがDAOではないでしょうか。
DAO(Decentralized Autonomous Organization)は分散型自立組織と訳されています。たしかにこれだけではネット上のサロンコミュニティのようなものなのか、はたまたリモートワーク中心の団体のことなのか、意味不明ではあります。
DAOの定義はすでにそれぞれのDAOによって微妙に違いがありますが、狭義では以下ぐらいのものになるでしょう。
さらに厳密にするなら、かつてはビットコインの運用システムそのものがDAOであり、スマートコントラクトを持ったイーサリアムが原初のDAOです。現在は仮想通貨以外のブロックチェーン技術を使用したスマートコントラクトを使った組織構造をDAOとするほうが一般的かもしれません。
DAOとは何か
定義はともかくとして、DAOを理解するためにはその特徴から考えたほうが良いでしょう。個別のDAOでは異なる要素もありますが、共通的なDAOの特徴としては以下のものがあります。
- 自律的組織
- 分散型構造
- 民主的運営
- 透明性
- ブロックチェーン
- 内部資産とトークン
- スマートコントラクト
- オープンソース
このようにDAOの特徴とされるものは多くあり、それだけに革新的な概念でもあります。それぞれの特徴を簡単に説明してゆきます。
自律的組織
特に意識的に制御しなくてもその機能が損なわれないように自ら動作することを自律的というわけですが、DAOで言う自律的組織とはその運営が特定の人物などに依らず、自ら自動的に行われるような組織になります。
実際にはあまり起こり得ないでしょうが、DAOは参加者が1人もいない状況であっても組織としての基本的機能がコードに記述されているため、コンピューターのネットワークによって自動的に動作することになります。
分散型構造
ブロックチェーン技術は分散型のコンピューターネットワークによって機能が維持されていますが、DAOで言う分散はそれに加えて、構成要素となる人員や組織を管理監視する権限が中核を持たないように配置されている、という意味も入ります。
この点については、企業などの会社組織のようなピラミッド型の組織構造ではなくて、並列的なネットワーク構造だという説明のほうが理解しやすいかもしれません。
DAOの参加者は国籍などを問われないのが普通です。また匿名で参加することも可能です。参加者がネットワークを介して空間的に分散していることも分散型構造の一つとは言えるでしょう。
民主的運営
DAOが発行するトークンを手にした人はそのDAOに参加したことになります。トークンの位置づけはDAOによって異なりますが、多くはガバナンストークンと呼ばれるものが発行され、その持ち分に応じてDAOの運営方針の変更や意思決定に関わることができます。
企業組織のように特定のリーダーや専制的な権限をもつ人は存在しません。意思決定はガバナンストークンのホルダーの投票によって行われ、その投票結果も全てブロックチェーンに記録されるため不正や背任行為が非常に起こりにくい構造になっています。
参加者全員が平等な立場で関わり、出された意見は投票によって決められます。運営が民主的であることが、よりDAOに価値を与えています。
透明性
DAOの組織運営はすべてブロックチェーンに記録されるため、非常に透明性が高く不正が起こりにくいしくみになっています。意思決定は誰でも見ることができる場所で議論されます。
またスマートコントラクトのコードやトランザクション履歴などのDAO内部のデータに関しても参加者は平等にアクセスできます。
ブロックチェーン
ブロックチェーンは分散型ネットワークに構築されたデータベース、あるいは台帳のようなもので、不正な記録はできないようになっています。また内容は誰でも簡単に閲覧できるので検証、監査しやすく、透明性が高い組織運営ができます。
内部資産とトークン
DAOの発行するガバナンストークンは意思決定の投票として使われますが、資金調達としての役割もあります。DAOはその内部資産を使って運営を行います。
トークンは実質的に仮想通貨と同じように取り扱われます。ただし取引できる場所が限られることと常に流通しているようなものではないため、流動性のリスクはあります。
スマートコントラクト
スマートコントラクトはブロックチェーンの機能でありイーサリアムにおいて初めて実装されました。プログラムコードがブロックチェーン上に記録されており、あらかじめ定められた条件によって起動しその内容を実行します。
スマートコントラクトの内容はオープンにされており誰でも見ることができます。したがってDAOの運営ルールも誰でも確認することができます。
DAOの運営ルール、投票方法、ガイドラインなどは全てスマートコントラクトによって記述され、その変更も投票結果を受けて行われます。
オープンソース
オープンソースはDAOとは別の概念で、コンピューターソフトウェアにおいてプログラミングコードが誰でも確認できて自由に改変できるようにしてあるものを言います。
主な仮想通貨のブロックチェーンはオープンソースによって実装され、オープン型と言われる開放された分散型ネットワークによって仮想通貨の機能が実現されています。またブロックチェーン上のスマートコントラクトも開放されており、誰でも中身を確認することができるようになっています。
DAOの可能性
DAOはすでにいくつもありますが、本格的に現実社会に影響を与えるようになるのはまだ先かもしれません。DAOの特徴のいくつかは非常に画期的ではありますが、それゆえに多くの問題がでてくるでしょう。投資先として考えるのは不安が大きいですが、参加者になって運営に携わるのは新しい働き方を体験できておもしろいのではないでしょうか。
DAOにはまだ技術的にも法的にも解消されていない問題があり、セキュリティや運営方法に関してもこれから混乱が生じることがあるでしょう。
しかしDAOはWeb3の中核的要素になるだけの可能性を秘めており、うまく発展してゆけば、Web3時代においてウェブの性格を大きく左右するものになってゆくと考えます。
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