新原付の意味するところ

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前の記事で書いたように原付の制度がいずれ変わりそうです。この変更によって原付二種として販売されている125ccバイクが出力制限された上で原付一種として乗れるようになります。原付に関心のない人にはほとんど意義を感じられないニュースなのかもしれませんが、実はクルマ社会のこれからの変化を予感させる点も含まれているのです。

EVスクーターはどうなった?

個人的に理想的な自動車行政、交通行政全体を考えるとしたら、まず原付のようなコミューターを都市内の移動手段として積極的に活用し、個人の基本的な乗り物として位置づけると思います。そうした上で都市計画を含めて都市間の交通などの全体的な構想を計画するでしょう。

また現実的な自動車行政の主要なテーマと言えば、ガソリン自動車からEVなどの電動自動車への転換、電動化になるでしょう。これは既に世界的な潮流となっていますから、さまざまな困難はあってもおそらく巻き戻るようなことはないでしょう。

EV原付は理想的なコミューターとなる可能性が高く、環境負荷の低減や交通行政などの課題解決と整合的であるため、長年誕生が望まれてきました。

ところが国内の原付市場においても10年近く前から電動化への試みは続いていましたが、あまり芳しい進展は見られていません。EV原付の普及にはなにより導入コストがガソリン原付を上回る必要があり、充電設備などのインフラの整備、一定以上の走行性能なども不可欠で、現状においてはいずれも十分には達していないように見えます。

新原付の誕生は基本的には排ガス規制へ適合するためその場しのぎ的に行われた対応の結果でしかないのでしょうが、その背景にはEV原付への移行への見通しが当面は立たないという現実があるのではないかと想像しています。もしEV原付の普及が明らかなのであれば、ガソリンエンジンの原付はこのまま見殺しにするという選択もできたでしょう。

一方の現実として、中国では電動スクーターは既に一般的な乗り物になっているということがあります。既に3億台を突破したと言われており、完全に庶民の足として定着しています。ちなみに日本の原付の年間登録台数は十数万台程度であり、2輪車全体でも40万台です。

もちろん中国の電動スクーターと国内で想定しているEV原付では規格や法制度などの環境が異なっており無条件で比べられるわけではありませんが、市場規模自体が圧倒的に違うということと、端的に国内メーカーの技術力や資本力が足りていないという事実がこうした違いを生んでいるのでしょう。

中国の電動スクーターのメーカーが直接日本国内の原付市場をターゲットにすることは、市場規模から考えても当面はありそうもないですが、既に輸入されたものが国内の規格に合わせて流通しており、こうしたEVバイクが今後どれくらいの広がりと影響がでてくるのかは見てゆきたいところです。

こうしてみると国内二輪車メーカーのEV原付への対応はかなり腰が引けている印象があります。これはおそらくイノベーションのジレンマと言われるものであり、メーカーは革新的技術を前に立ちすくんでいるのでしょう。新原付はそうした現実から目をそらした結果生まれたものなのかもしれません。

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EV原付の出力規格変更はあるのか

新原付で施される出力制限は最高出力4kwと言われています。これは現行の原付一種と比べると若干高いぐらいで、これまでの排ガス規制の影響により抑えられてきた分が元に戻ったぐらいの出力です。原付二種のバイクを一種として扱うための出力としては妥当な数値ではあるとは思います。

一方で電動バイクの原付一種は0.6KW以下となっています。これは定格出力と呼ばれるもので安定して出せる出力を示しています。ヤマハのe-Vinoはほぼ定格出力0.6kWの電動バイクですが最高出力は1.2kWと記載されており、この定格出力であれば最高出力も概ねこれと同様の値になるのではないかと思います。

つまり同じ原付という規格であるにも関わらず、パワーソースによってかなりの制限出力に違いが生じることになるのではないでしょうか。もちろん電動とガソリンエンジンでは出力の特性はかなり違うので一概には言えない話ではあります。

ともかくこの差に明らかな性能上の違いがあるのであれば、電動バイクの出力規定についても将来的な変更が計画されていて、それが新原付の出力制限の値につながっているのではないか、という推測もできるような気もします。

また政策的に電動化を促すのであれば、本来は既存の原付の走行性能を上回るようなところにEV原付の基準値を設けなければならなかったでしょう。技術的に、あるいはコスト的に実現可能かどうかはまた別の問題として、これまでに様々な規制を課されてきた原付市場においてはそもそも走行性能で上回っていないものが売れるようになるわけがありません。

個人的にはEV原付に試乗したこともないのでなんとも言えないのですが、おそらく0.6kWの制限ではガソリンエンジンの原付とは見劣りしてしまうのでしょう。この制限に合理性があるかもう一度検証する必要があると思います。

道路交通法では電動バイクについて、0.6kW以下を原付、0.6kW超1.0kW以下を小型二輪、 1.0kW超20kW以下を普通二輪、20kW超を大型二輪と定めています。まず気づくのは普通二輪の範囲が異様に広いのと大型二輪を懲りずに分けていることです。

こうした免許区分に実際的な意味がどれほどあるのかはまた別の機会に考えてみたいところですが、区分するにしてもバランスが悪いように感じます。おそらく区分設置ごとに合理的な理由もなく基準を定めているので全体のバランスが崩れてしまっているのでしょう。

個人的にはEV原付を2kWぐらいにするか、小型二輪と大型二輪を廃して4kWぐらいまでを原付としてまとめてしまえば区分のバランスが良くなるのではないかと思いますがどうでしょうか。

狩生

  ■ フリーダウンシフター ■
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クルマ社会原付のススメ
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